なぜ麻酔中にはモニターが必要か?
「生きていることを証明してください。」と言われたらどうしますか?「意識がある」「呼吸している」「脈を触れる」「体温がある」・・・通常はこれらで証明できるかもしれません。しかし、全身麻酔中は、意識はありません。呼吸も人工的にしているだけかもしれません。脈は触れるでしょうが時に低血圧で触れにくくなることもあります。体温も麻酔中は低くなることがよくあります。
これを踏まえて、次の動画を見てください。この患者は果たして生きているのでしょうか? 胸郭は動いていますが、挿管されていますから人工的に呼吸しているだけかもしれません。そこでモニターの画像を重ねてみます。するとどうでしょう。今まさに心臓が止まるところではありませんか。しかしご安心ください。これは人工心肺を使用した別の患者のモニターです。この患者のモニターは後からでてくるものです。このように、モニターがないと麻酔中の患者は生きているかどうかも疑わしいということがわかるかと思います。
余談ではありますが、モニターが開発される前、人の死は非常に曖昧なものでした。実際、生きたまま埋葬されてしまうこともあったそうです。次の図はベートソンの鐘楼という棺桶で、もし生きたまま埋葬され、その後目を覚ますことがあったら、ひもを引くことで上についている鐘を鳴らし生きていることを知らせ、それと同時に新鮮な空気を取り入れる窓が開くようにできていました。これを発明したジョージ・ベートソンはビクトリア女王から勲章を頂いたと言いますから、その当時いかに人々の関心が高かったがわかります。
麻酔の4要素
- 無痛
- 無動
- 意識の消失
- 湯が違反者の抑制
これらの条件を満たすことが、全身麻酔には必要とされます。しかし、これらの条件を満たすことは、言葉は悪いのですが、いわば患者を「半殺し」にしているようなものです。これが麻酔の特殊性です。普通の医療は、患者が死の淵にある時、手を差し伸べて引き上げようとする。しかし、麻酔はその逆。わざわざ麻酔薬を使って「死に近い場所」まで持っていく。この生命の幅が非常に狭い、全く余裕のないギリギリの線で、しかも起きている時とできるだけ同じ状態に保つため、モニターを用いてより細かく管理することが重要なのです。